平成23年改正介護保険法のポイント

平成23年6月に成立した改正介護保険法のポイントをお伝えします。

■はじめに 

615日の参院本会議で、介護保険法や老人福祉法などを改正する「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(改正介護保険法)が可決、成立し、来年4月から施行されることになりました。今回は、改正介護保険法のポイントをお伝えします。

2つの新サービスの創設
 訪問介護と訪問看護の両サービスを24時間体制で提供する「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が創設されました。

 

具体的には、日中・夜間を通じ、訪問介護と訪問看護が密接に連携しながら、短時間の定期巡回の実施や利用者からの要望に応じた随時対応のサービスが行われます。

 

また、小規模多機能型居宅介護と訪問看護など複数の居宅サービスや地域密着型サービスを組み合わせた「複合型サービス」も創設されました。

 

現行制度では利用者はサービスごとに別々の事業所からサービスを受けるため、サービス間の調整が行いにくく、柔軟なサービスが受けられません。

 

また、現行の小規模多機能型居宅介護は医療ニーズの高い要介護者に十分対応できていません。「複合型サービス」の創設により、この2つの問題の改善が図られます。 

 

■介護サービス情報公表制度の見直し
事業者に義務付けられている介護サービス情報の公表制度について、都道府県が必要と判断した場合に調査を実施することができます。

■劣悪な労働条件での就労を抑止
 介護サービス事業者の指定権者である都道府県や市町村は、労働基準法など、労働法規に違反して罰金刑を受けた事業者の指定を取り消すことができます。

■介護予防・日常生活支援総合事業の創設
 介護予防サービスや見守り配食、などの日常生活支援サービスを総合的かつ一体的に実施できる介護予防・日常生活支援総合事業が創設されました。

■地域包括支援センターの機能強化

 地域包括支援センターの設置者は、介護サービス事業者、医療機関、民生委員、ボランティアなどの関係者と連携に努めなければなりません。

■介護保険事業(支援)計画の見直し

 市町村の介護保険事業計画には、認知症である被保険者の自立した日常生活の支援に関する事項、医療との連携に関する事項、高齢者の居住に係る施策との連携に関する事項等について定めるよう努めるものとされました。

 

なお、被保険者の心身の状況、その置かれている環境等を正確に把握した上で、これらの事情を勘案して事業計画を作成するよう努めるべきであることも示されました。

 
 都道府県の介護保険事業支援計画については、高齢者居住安定確保法に基づく高齢者居住安定確保計画との調和が保たれたものでなければなりません。


■財政安定化基金の特例

 介護保険料の急激な上昇を抑制するため、都道府県は平成24年度に限って財政安定化基金の一部を取り崩すことができます。


【介護保険法以外の主な改正】

 

■有料老人ホーム等の利用者保護
 有料老人ホーム等の設置者は家賃、敷金及び介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として受領する費用を除くほか、権利金その他の金品を受領できません。

 

また、利用者から受け取る前払い金を受領する場合においては、入居後の一定期間内に利用者が契約を解除したり、死亡したりした場合、受け取った前払金から一部を除いた金額を返還する旨の契約を利用者と締結しなければなりません。(老人福祉法)

■後見等に係る体制の整備等
 市町村は、後見、保佐及び補助の業務を適正に行うことができる人材の育成等及び活用を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければなりません。(老人福祉法)

■介護療養病床の廃止期限延長

平成23年度末での廃止が決まっていた介護療養病床の廃止期限が6年間延長され、平成29年度末となりました。(健康保険法)

■介護従事者によるたん吸引などの実施
 介護福祉士と介護の業務に従事する者のうち、認定特定行為業務従事者認定証の交付を受けている者は、保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、診療の補助としてたん吸引などの行為を行えるようになります。

 

また、事業の一環としてたん吸引などの業務を行う事業者は、事業所ごとにその所在地を管轄する都道府県の登録をうけなければなりません。(社会福祉士及び介護福祉士法)

■介護福祉士国家資格の取得方法見直しの延期
 平成24年年41日の施行を予定している介護福祉士国家資格の取得方法見直しについては、施行時期が平成2741日に変更されました。(社会福祉士及び介護福祉士法)

■まとめ

要介護者の急増により現状の介護サービス体制は不備が目立ってきましたが今回の改正により現状に合った体制整備が図られました。

 

しかし、長期的には財政上の問題から、年金同様、介護サービスを十分に受けることは期待できません。来年1月には介護保険料控除制度も始まります。民間の介護保険への加入など早目に検討しましょう。

 

 (参考資料) 

 

介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案の概要

 

高齢者が地域で自立した生活を営めるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム」の実現に向けた取組を進める。

 

1 医療と介護の連携の強化等

医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが連携した要介護者等への包括的な支援(地域包括ケア)を推進。

日常生活圏域ごとに地域ニーズや課題の把握を踏まえた介護保険事業計画を策定。

単身・重度の要介護者等に対応できるよう、24時間対応の定期巡回・随時対応型サービスや複合型サービスを創設。

保険者の判断による予防給付と生活支援サービスの総合的な実施を可能とする。

介護療養病床の廃止期限(平成24年3月末)を猶予。(新たな指定は行わない。)

介護人材の確保とサービスの質の向上

介護福祉士や一定の教育を受けた介護職員等によるたんの吸引等の実施を可能とする。

介護福祉士の資格取得方法の見直し(平成24年4月実施予定)を延期。

介護事業所における労働法規の遵守を徹底、事業所指定の欠格要件及び取消要件に労働基準法等違反者を追加。

公表前の調査実施の義務付け廃止など介護サービス情報公表制度の見直しを実施。

高齢者の住まいの整備等

有料老人ホーム等における前払金の返還に関する利用者保護規定を追加。

社会医療法人による特別養護老人ホームの開設を可能とする。

※厚生労働省と国土交通省の連携によるサービス付き高齢者向け住宅の供給を促進(高齢者住まい法の改正)

認知症対策の推進

市民後見人の育成及び活用など、市町村における高齢者の権利擁護を推進。

市町村の介護保険事業計画において地域の実情に応じた認知症支援策を盛り込む。

保険者による主体的な取組の推進

介護保険事業計画と医療サービス、住まいに関する計画との調和を確保。

地域密着型サービスについて、公募・選考による指定を可能とする。

保険料の上昇の緩和

各都道府県の財政安定化基金を取り崩し、介護保険料の軽減等に活用。

 

【施行日】

1⑤、2②については公布日施行。その他は平成24年4月1日施行。

(出典)第76回(平成23616日)社会保障審議会介護給付費分科会資料 資料3

 

 

What's New

<ニュース・セミナー>

What's New!

 

<まずはご相談ください>

お問合わせはこちらから

〈メルマガ創刊しました〉